素材のこと

素材のこと・春

ルスティクのデザート、パフェ。

四季おりおりの果物がいきるパフェをデザートにしています。ベースとなるババロアは、京田辺特産の玉露入り。手摘み玉露日本一の、山下新壽園さんのお茶です。シェフとは旧知の間柄。貴重なお茶を分けていただいています。茶葉ごと用いていも、あと味さわやかなのは、玉露ならでは。果物とのマッチングもいいんですよ。

山下新壽園、新茶のとき
山下新壽園、新茶のとき

山下新壽園、新茶のとき

4月、シーズン最初の摘み取りに伺いました。茶畑にかかるむしろをめくると、大勢の人が。茶葉は一枚ずつ、手で摘み取ります。収穫前に日光をさえぎることで、甘みのつよい玉露ならではの味が得られます。とれたての葉は、濡れたような緑がなんともいえないうつくしさ。これからおよそ6時間をかけ、お茶にする行程を経ていきます。針のように細く青々とした茶葉。手の感触だけで、水分をはかるのだそう。手のひらも濃い緑に染まっています。

山下新壽園
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山下新壽園、新茶のとき

かみむら農園の苺

パフェの果物のなかで、いちばん長い期間召し上がっていただけるのが、苺です。甘い苺はたくさん出回っていますが、上村さんのは別格。果実を口に入れると、とても甘く、そのすぐあとに、きりっとした酸味が味わえます。苺らしさがひと粒ずつに詰まっているとでもいいましょうか。シェフも惚れこむ苺、とれる間はできるだけ使いたい。ということで、しぜん、苺のパフェの出番が長くなっているのです。

かみむら農園の苺
かみむら農園の苺

苺は栽培期間が長く、病害虫の被害を受けやすい果実。そのため、ふつうは農薬の散布回数を増やさざるを得ないのです。化学肥料・農薬不使用の有機栽培の苺生産者は、日本でも10名いるかいないかといわれます。そのひとりが、かみむら農園の上村慎二さんです。

安心安全はあたりまえ、味のよいものをと、土づくりからこだわっておられます。おからと糠を、寝かせて発酵させ、肥料に。薄紫色のたまり水は、糖分があるかどうかの証。ハウスの中には、ハエとハチが飛び回り、受粉を助けています。受粉昆虫の彼らがいなければ、人間も生きていけません、と上村さん。収穫作業は、草木も眠る丑三つ時、夜中からはじまります。植物の状態が安定し、果実に栄養が蓄えられる時間であるといいます。おいしい苺のためにかかる手間を思い、脱帽です。

かみむら農園
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かみむら農園の苺

お魚料理、付け合わせとソース。

お魚料理には、季節ごとの野菜ソースを添えています。たとえば、春は筍。冬は、ほうれん草。フランス料理を象徴するもののひとつが、ソース。いわば、料理の軸となるようなパートを野菜で仕立てるのは、なによりも近郊のすばらしい素材を生かせる方法でもあるから。

シェフのなかでは、もうひとつの主役と位置づけているほど、大切にしている野菜のソース。魚といい勝負になっていると思うのですが、いかがでしょう。

春の目玉は、筍。
春の目玉は、筍。

春の目玉は、筍。

京都辻農園の白子筍は、すっきりとしてクリアな味。宝石のようと思っています。筍のソテー、姫皮のソース、根元のシャリシャリの食感はうすくスライスして、と、春のいっとき、コースは筍づくしです。

春の目玉は、筍。

辻さんの竹林。

竹の根は、地中で横へ横へと浅く伸びます。長い体を支えるために、網の目のように互いが重なり合いながら、縦横に広がっているのが見えます。

次の世代を生む地下茎を切らないよう、穴を広げながら、時間をかけて、ひとつの筍を掘り上げていきます。難しいほど、掘る意欲も盛り上がるのだそう。

ほんとうに甘い部分は、根に近いところ。竹が成長するために必要な糖分がたくわえられているからです。そのおいしさを味わってもらうために、芽が出る前に掘ります。

筍を作るより、土を作る感じ、と辻さん。筍を掘ることは、土を耕す絶好の機会ととらえています。掘ったあとの穴は、落ち葉と土を交互に入れながら、丁寧に埋め戻します。空気が含まれ、土壌をゆたかにし、次の世代の筍もおいしくしてくれるのです。

京都辻農園
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かみむら農園の苺